「妙案ですね」ベヴィエも同意した。
「カレロスに着いたらオーツェルを大聖堂に届けて、ドルマントに会いにいってくれ。こっちで起きてることを説明して、ヴァニオンとほかの騎士団長たちにも伝えてもらうんだ。奥地で起きてる小競合《こぜりあ》いはマーテルが裏で糸を引いているものだから、絶対に教会騎士団を派遣しようなどとは考えるなと釘を刺しておいてくれ。クラヴォナス総大司教が亡くなったときには、四騎士団がカレロスに駐在している必要がある。それを聖都からおびき出そうとするのは、これまでずっとマーテルがやってきたことなんだ」
「かならず伝えます」ベヴィエが言った。
「できるだけ急いで行ってきてくれ。猊下は見たところかなり頑丈そうだから、少々無理をしても大丈夫だろう。少しでも早く国境を越えれば。時間を無駄にするな。ただ、じゅうぶんに気をつけHKUE 呃人てな」
「任せといてください」クリクが請《う》け合った。
「できるだけ急いでランデラ湖へ駆けつけます」とベヴィエ。
「金は足りるか」スパーホークは従士に尋ねた。
「何とかなります」クリクはにっと笑った。白い歯が薄暗い光にきらめいた。「それにドルマントは古い友だちですからね。気前よく貸してくれますよ」
 スパーホークは笑い声を上げた。
「じゃあもう寝るんだ、二人とも。明日はオーツェルを連れて、夜明けとともに出発してもらいたい」
 翌朝は誰もが夜明け前から起きだして、カダクの大司教の左右を固めたベヴィエとクリクを見送った。スパーホークは料理の火明かりで地図を確かめた。
「一度浅瀬の向こうに戻ろう。その東にもっと大きな川があるから、橋を探さなくてはならないだろう。北へ行く手だな。ゲーリック伯爵の巡邏《じゅんら》隊なんかに見つかりたくはない」
 朝食をすませると、一行は水を跳ね飛ばして向こう岸に渡り、馬首を北へ向けた。東の空がぼんやりと明るくなり、どこか厚い雲の向こうで日が昇ったことを示していた。
 ティニアンがスパーホークの横に並んだ。